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今月の指針12月号「折伏に王道なし」

『十字(むしもち)御書』に、

「蓮はきよ(浄)きもの、泥よりい(出)でたり」

(新編1551頁)と。

泥沼に大輪の華を咲かせる蓮華は、二千年もの悠久の時を経て開花する永遠の華です。同時に根の朽ちない因果倶時(いんがぐじ)の不思議な花でもあります。

妙法の偉大な功徳は、その蓮華に譬えられ、その主体者である久遠元初の御本仏は、日蓮と名乗られて五濁に塗れた末法にお生まれになりました。「日蓮」とは、その体を表して余りある素晴らしい御名です。云わく、「明らかなる事日月にす(過)ぎんや。浄き事蓮華にまさ(勝)るべきや。法華経は日月と蓮華となり。故に妙法蓮華経と名づく。日蓮又日月と蓮華との如くなり。」 

(『四条金吾女房御書』新編464頁)

私達の生きる世界は、表面の華やかさとは裏腹に、一皮剥けば煩惱と欲望の渦巻く娑婆世界です。

仏教ではこれを耐え忍ぶ世界、忍土(にんど)と呼びます。経済苦や病苦にはじまって人間関係・家庭不和・誹謗中傷、果ては戦争に至るまで、苦悩の種は尽きません。


 しかし蓮華が泥沼の深さが深いほど大輪の華を咲かせるように、煩惱・業・苦が深いほど本物の信心で真の幸せを勝ち取ることができるのです。

悩むがゆえに唱題で仏智を磨いて歓喜を生み、不幸のゆえに唱題で真の幸せを勝ち取ることができる。三大秘法の信心は、絶望からの希望の光、勇気と元気が芽生える生きる力の源です。苦しみは、そこから逃れようとすればするほど纏(まと)わりつく厄介者。ならばそれに負けない正しい信心の根を深く張り、強く豊かに生きることが大事です。


 学問に王道なし。折伏にも王道はありません。そこに秘訣や虎の巻はありません。

題目を上げ切って確信をつかみ、智慧を養い、勇気を身につけ、後は最善の努力が全てです。私達の信力と行力に上限はありません。

折伏は抜苦与楽の慈悲行です。粗削りでも稚拙でも未熟でもいい、一途(いちず)に相手を思いやる誠意と熱意があれば、相手の心は動くのです。六難九易を引くまでもなく、折伏は難事中の難事です。だからこそそこに無上の価値と功徳があることを忘れてはなりません。


 送った日々を見つめ直して心機一転、明年につながる精進努力を重ねてまいりましょう。


清涼寺 寺報 「従藍而青」

今月の指針 指導教師 石橋頂道 御尊師

2023年12月1日号より

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