今月の指針10月号「朝三暮四(ちょうさんぼし)」
「朝三暮四」は、『莊子』(そうし)にある有名な故事です。
「宋の狙公(そこう)が、飼っていた猿たちに茅(かや)の実を、朝は三つ晩に四つ与えたら一斉に怒り出しました。そこで一計を案じた俎公は、朝に四つ晩に三つ与えると、猿たちは一斉に喜びました。(『斉物論』第二)
目先の事に惑(まど)わされて喜ぶ浅智慧です。しかし目先の利害に目が眩(くら)んで一喜一憂し、外見に惑わされて本質を見失う猿の浅智慧を笑う資格は人間にありません。
『佐渡御書』には次のように仰せです。
「魚は釣り針を警戒して深く潜(もぐ)る、しかし餌に騙(だま)されて針に食らいつく。鳥は捕獲を恐れて高い梢(こずえ)に避難しても網に引っかかる。その愚かさは人間だって同じ、目先の物事に幻惑されて大事な命を落とすのです。」(取意)
えてして人間は、目先のことにとらわれ、表面の華やかさに目が眩(くら)み、優しい言葉や軟らかい身のこなしに誤魔化されて泣きを見ることが少なくありません。だからこそ世の中に○○詐欺や××商法が横行するのでしょう。麻薬だって同じ、最初の快感に陶酔(とうすい)して、ついついのめり込んで終(つい)には身の破滅です。
悪縁充満する悪世末法で強く正しく生きて行くためには、物の本質を見抜く観察眼と先を見通す智慧を養うことが不可欠です。
大聖人は、『観心本尊抄』に、
「大乗を学する者は肉眼(にくげん)有りと雖(いえど)も名づけて仏眼(ぶつげん)と為(な)す。」
(新編647頁)
と説かれて、正しい信心で磨けば肉眼も仏眼となると仰せです。
また『御義口伝』には、
「功徳とは六根清浄の果報なり。所詮今(いま)日蓮等の類(たぐい)南無妙法蓮華経と唱へ奉る者は六根清浄なり。」
(新編1775頁)と。
三大秘法の大御本尊への純粋無垢な信心は、以信代慧の智慧と六根清浄の功徳を身に具える末法最善の修行です。
うわべの華やかさに執(とら)われず、本質を見抜く確かな眼を養って悪縁を振り払い、自ら境界を大きく開いていくことが、引いては下種折伏に繋(つな)がることを忘れてはなりません。
炎暑も終息の十月です。本門戒壇の大御本尊御図顕の月、お会式の月。いよいよ信心の炎を燃やし、御報恩の誠を尽くしてまいりましょう。
清涼寺 寺報 「従藍而青」
今月の指針 指導教師 石橋頂道 御尊師
2025年10月1日号より