今月の指針9月号 「疾きこと風の如く、徐かなること林の如し」 風林火山
「疾(と)きこと風の如く、徐(しず)かなること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如し」
中国の古典『孫子の兵法・軍争』にある有名な風林火山の一説です。
戦国時代の勇将・武田信玄は、これを自軍の軍旗に大書して、敏捷(風)・沈着(林)・果敢(火)・不動(山)、臨機応変・緩急自在に軍を操って勝利をおさめたのです。
私達の一生は、競争社会を生き抜く戦いの連続です。風林火山は、そんな厳しい人生を生き抜く指標の一つです。
ジッと時を待つ、一転好機到来すれば果敢に挑戦する。燃えるような情熱で事に臨む、時に求められる冷静沈着な判断、状況に応じて多岐多様です。
これは広布の戦いにも通じます。
下種先があれば、疾きこと風の如く、疾風(はやて)のように飛んでいく。そこでじっくりと先ず相手の話に耳を傾ける。徐なること林の如しです。しかしひとたび談(だん)、謗法に及べば、侵掠すること火の如く、臆することなく破折です。
最後は、山の如く揺るぎない信心の確信が物を言うのです。
それは総本山で仰ぎ見る壮麗な富士の雄姿そのものです。その実践は決して容易ではありませんが、折伏実践の手引きとして心得れば、勢い折伏にも力が入るというものです。
ところで私達の信心の目的は、成仏の確立です。決して煩悩五欲に塗(まみ)れた人間が、悟り澄ました存在になることではありません。むしろ煩悩も欲望も切り離すことなく生きる力に変えていく、信心の醍醐味もそこにあります。
悩むが故に題目を唱え、不幸の故に唱題する。災い転じて福となす変毒為薬(へんどく いやく)の功徳は無上の法悦、宿業転換・転重軽受(てんじゅう きょうじゅ)は生きる希望です。
目まぐるしく動く現代社会。表面の華やかさとは裏腹に悪縁の充満する娑婆世界(しゃばせかい)です。しかしそこが紛(まぎ)れもなく、私達の生きるフィールドです。逃げるわけにはいきません。
だからこそ三大秘法の大御本尊を人生の羅針盤(らしんばん)に据(す)えて強い信心を磨き、深い智慧を身につける以外に成仏を確かにする道はないのです。
連日酷暑(こくしょ)が続く異常気象。これも信心の目で見れば、わが身を鍛える善知識です。
自行の充実と共に一層折伏育成に精魂を傾け、流れる汗を拭いながら尊い地涌の使命を果たしてまいりましょう。
清涼寺 寺報 「従藍而青」
今月の指針 指導教師 石橋頂道 御尊師
2024年9月1日号より